A. 確かに近年、一括入試により、所属選修(教科)に属さず教育学部生として入学し、在学途中に所属選修を決定する(1年後期または2年)といった方式を導入している大学が複数存在します。そこには入学後、大学カリキュラムを通じて多くの分野に接し、自分がなりたい教員像を明確にした後に各専門・専攻に配属するシステムとなっています。ここにはいろいろなメリット、デメリットがあります。これらに関して以下に述べます。以下の事項により個別学力検査の「一括入試と個別入試」の違いをご理解ください。なお、教科専門性の高い中高等学校教員養成に関するものとします。 |
一括入試のメリット(受験生側) |
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選修(教科)ごとに10名前後という小窓口の個別入試より、選修の壁を無くして一括入試にした方が倍率が同じでも数十人から100名を超える合格者が生じる。ようは単純にイメージ的に受験生が受けやすくなります。(数字のトリックで合格者10名で受験生3倍の30名という場合と合格者100名で受験生300名の感覚の違いである。) |
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入学後に実際に幼小中高の教育現場を見たり、教員養成に関する大学カリキュラムを理解した後に所属選修を決定できる。 |
一括入試のメリット(大学側) |
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個別入試の場合、例え上位から入学しようとも選修(教科)間で合格者の成績にばらつきが生じますが、一括の場合、単純に成績上位の受験生を入学させることが可能である。つまり、学部全体としては成績優秀者が入学することになる。 |
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受験生及び入学者が確保できる。実は一括入試の場合、そのほとんどが学生の希望により入学後希望の選修(教科)に配属できます。これは、選修間格差(人数差)を生むことになります。極端には国語の教員養成専攻に全学生が希望し、他の専攻はゼロという可能性もあります。しかし、教育学部の本分は地域や日本の教員需要に即した教員養成です。一括入試の場合、その需要人数を無視しています。つまり、学部生き残りのためになりふり構わず、受験生を確保することができます。 |
個別入試のメリット(受験生側) |
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一括入試の場合、国語、数学、英語といった限られた個別学力試験を受ける必要があります。一方、個別入試の場合、各専攻の特徴を活かした受験ができます。つまり、自分の自信のある教科で勝負できます(例えば、山口大学教育学部理科教育選修を希望した場合は理科の試験を受けることが可能です)。 |
個別入試のメリット(大学側) |
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入学時から選修が決まっており、学生の方向性(教科専門性)が明確なことから入学時から専門を考慮した指導ができる。 |
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大学を卒業すると教員免許は取得できます。しかし、教員採用試験に受からなくては正規採用にはなりません。その採用試験には一般教養以外にも専門教養等が問われます。つまり、教科専門の学力は重要なのです。入学時の個別入試によってその専門性の実力をはかることができます。 |
一括入試・個別入試共通の問題(受験生側) |
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共に言えることですが、点数だけを考えると一括入試だったら受かったのに個別試験のために落ちたり、またその逆の可能性も生じます。上で述べた数字のトリックに惑わされず、自分にとってどちらの入試が適しているかご判断ください。キーワードとしては「選修単位の小さいくくりか、学部またはコース単位の大きなくくりのどちらを好むか」、「受験科目に将来(教員)を見据えた教科が入っているかどうか」、「入学前に選修を決めるか、入学後に決めるか」等があります。 |